年頭にあたり、謹んでご挨拶申し上げます。
旧年中は並々ならぬご厚情を賜り、御礼申し上げます。
本年もご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い致します。
あしひきの 山の木末の 寄生(ほよ)取りて
插頭(かざし)つらくは 千年(ちとせ)寿(ほ)くとぞ
安之比奇能 夜麻能許奴礼能 保与等理天 可射之都良久波 知等世保久等曽
あしひきの やまのこぬれの ほよとりて かざしつらくは ちとせほくとぞ
【 山の木の梢(こずえ)に生えているヤドリギを取って、簪(かんざし)にしたのは、千年(の世)を祝ってのことです。】
『万葉集』巻第十八 4136」大伴 家持
(おおともの やかもち)の和歌。
年末年始は大寒波到来という予測ながら
大混乱はなく何よりでした。もちろん
雪国の方々は大変だったと思います…
…と、昨年に書いていますが、2021年は
大きな混乱もあり、コロナ禍も相まって
ご不便・難儀された方も多いと存じます。
大変な年だったと歴史に残る2020年でしたが、
2021年は「再生」の年としたいものです。
歌にある「ほよ」=「寄生」と書かれたように
寄生木(ヤドリギ)のことを「ホヨ」と言いました。
欅・榎など落葉樹の梢に寄生して、
冬も緑の円球型を保ち、早春には黄色の小花を付け、
やがて真珠のような実になる「ヤドリギ」・・
過酷な寒さの中で、木々も葉を落とす冬。
生命が眠りにつく季節に、ヤドリギの円球にだけ
木の魂・生命が集中して宿ったように見えます。
そのため、寄生木=宿り木(やどりぎ)は
「神秘的な力」が宿っていると考えられました。


ヨーロッパでは古くから宗教的に神聖な木、
幸運を呼ぶ木とされてきました。
(日本とは品種が異なりますが)
西洋ではセイヨウヤドリギを用いて、
クリスマス・リースとして飾り 敬います。
この家持の和歌では、その「寄生木」を頭にかざして
新年の宴会を寿いだというわけです。
枯れ木に宿って、木の生命を宿す「宿り木」を頭にかざし、
その生命力にあやかって、千年の世・命を祈った・・
とても縁起の良い 華やかな情景が浮かびますね。
・・まあ、そうは言っても「現実の苦難」が
すぐに取り払われるものではありませんが、
それでも心意気を枯れさせることなく、
生命力を宿して、来るべき時に備える必要はあります。
2020年度もこのように書き記しましたが、
日々の何気ない些細な事象の全てが
自分への餞(はなむけ)寿ぎと受け止めて
自らが吉兆の顕現であるかの如くに
2021年も輝かしく楽しんで参りましょう。
それでは、年頭のご挨拶まで。
皆様の益々のご清栄を、心よりお祈り申し上げます。
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