2014年01月24日

Maurits Cornelis Escher


皆さま、こんにちは。

御無沙汰しているうちにセンター試験も終え、
受験生の方々は心身ともに正念場の時期でしょう。

順当な結果だった方は、気を引き締めて邁進し、
実力が発揮できなかった方は、長い人生における
一試練に向き合いながら奮起して欲しいと思います。

(所感を記そうとも思いましたが、時機を逸しましたし
 ここで何か書き述べて事態が変わるでもないので、
 受験者各位の健闘を祈っていることのみ記します。)


というわけで、今回は「名言の英語」を。
視覚の魔術師・エッシャーの言葉を取り上げます。

Maurits Cornelis Escher(1898.6.17 - 1972.3.27)
は、オランダの画家(版画家)、建築不可能な構造物・
幾何学的パターン・騙し絵など奇妙で独創的な作品を
多く遺した芸術家として有名です。


下の作品など、目に留めた方が多いでしょう。

belvedere_.jpg

Which reality is more powerful, the reality of the present or our memory of the past? We all know there are unreal worlds,
but are we quite sure there is a real one? I can't answer that.


(「現在の現実」と「過去の記憶」。どちらの現実の方がより強力なのであろう?我々は「現実ではない世界がある」と知っている、しかし「現実の世界がある」というのは果たして確かなことだろうか?私はその問いに答えることが出来ない。)

「過去」の定義も非常に難しいので、
「記憶」の問題を厳密に議論するのは避けますが、
同様の意味で「現実」という定義も難しいもの。


視聴覚力の差異によって認識世界は変わるでしょうし
万人にとって共通認識足り得る「現実」というものは
およそ「存在」し得ないことでしょう。。

「現実に起こっている」と認識されているもの、
認識されないが、存在していると考えられているもの、
存在していないが存在している可能性はあったもの、
或いは存在の可能性さえ思いもよらない「何か」さえ、

それらを全て包含しつつ、また一切含まない様相が
「共通の現実」だと、辛うじて言えましょう…。


その意味では「過去の記憶」と「現在の認識」とで
大差はないとも言え(人間の時間尺度では殊更に)、

ひいては「現実」とは各々が瞬間ごとに創造していく
事象の集積でしかなく、現出した瞬間に「過去」となる。

どの「時空間」を「現実」と言うのでしょうね??

(これは「言葉遊び」としても面白いですけれど、
 この辺りに、叡智の欠片が隠されているようですよ。)



Are you sure that a floor cannot also be a ceiling? Are you absolutely certain that you go up when you walk up a staircase? Can you be definite that it is impossible to eat your cake and have it?

(「天井」が「床」にもなるなど有り得ないとは、確かなことだろうか?階段を登っている時「上に行っている」と絶対的に確信できるだろうか?「ケーキを食べると同時にそれを持ち続けている」ことなど不可能であると断定し得るだろうか?)

You can't eat your cake and have it.
(ケーキを食べた後もケーキがあるということはない)、
すなわち、矛盾する2つのことを同時に実現することは
不可能だという慣用表現です。それを前提に考えて頂くと、


「矛盾する2つのことを同時に実現することは不可能だ」と
どうしてあなたは確信できる??という意味ですね。

まあ、二兎を追う者は一兎をも得ずとは言われますし、
まして「矛盾することを同時に行う」のは通常ムリです。

ただ、一見すると「矛盾」と見えるようなことでも
その実は宇宙法則に「矛盾しない」こともあります。

「矛盾すること」だと勝手な先入観で世界を狭めず
エッシャーの絵画的世界の住人の1人の如くに、
柔軟な視野で不可思議な現世を眺めていると、

奇跡としか思えない偶然=必然のオンパレードが
繰り広げられていることに気づけるものです。



I try in my prints to testify that we live in a beautiful and orderly world, not in a chaos without norms, even though that is how it sometimes appears.

(私が自らの版画で証明しようとしているのは、我々が「美しく秩序に満ちた世界」に住んでいるということだ。たとえ世界がどのように現れるとしても、規範なき混沌の世界に住んでいるのではない。)

「 a beautiful and orderly world 」とは
そうは言っても、どのような世界なのでしょう?

「 one's beautiful and orderly world 」?
「 one of the beautiful and orderly worlds 」?

…深遠に向かう思索の遊戯はさておき、
表層の字義通りの意味でも、興味深い言葉です。

壮大なスケールの秩序の下で、森羅万象が
正しく法則に従って各役割を果たしています。

それを「美しい」と言うかは各々の世界観によるものの
「大きな秩序」の中では一時的混乱・混沌さえ「一要素」、


極微小・至弱なものにさえ「秩序」が宿っていることを
想えば、エッシャーの言葉の意味を実感できましょう。


As far as I know, there is no proof whatever of the existence of an objective reality apart from our senses, and I do not see why we should accept the outside world as such solely by virtue of our senses.

(私の知る限り、我々の感覚から乖離した客観的世界が存在する証拠は何ら無いが故に、我々の感覚のみによって外世界を在るがまま受け容れるべきなのかは判断できない。)

エッシャーの意図と少しニュアンスがズレた和訳に
なっている可能性もありますが…分かりやすく直せば。


「判断できない」「現状では分からない」と認めるのは
科学的思考においては重要なポイントでしょう。

(論理思考が厳密であるからこそ、日常では
 堅苦しく思われる方もおられましょうが…。

「現在の情報下では、〜としか判断できない」とか
「未知のデータによっては、〜の可能性もある」とか 
 授業や議論においては私も普通に使いますけれど、
 日常会話ではシンプルに言う方がスマートですよね。)


未だ学術的に追検証されていない推論を、非科学的だと
感情的に否定するのも愚鈍ですが、非科学的推論を
盲目的に信じてしまうのもまた愚かしいものです。

学術的に検証するために膨大なデータを集めて
それを地道に精査し、自説を裏付けていったのが
歴史に名を残した科学者たちですけれど、

別に「世紀の大発見」に限らずとも、日常の人間関係や
事象観察においても、「自分が把握していない事実」が
あるかもしれないという「思索の余地」を残しておく方が
万事において臨機応変に対応できたりするものと思います。



So let us then try to climb the mountain, not by stepping on what is below us, but to pull us up at what is above us,
for my part I aim at the stars.


(さあ、山を登って行こう。「足下にあるもの」の上を歩んでいくのではなく、「頭上にあるもの」に(私に関して言えば、星々にまで)自身を引き上げていくことによって。)

エッシャーの不思議な時空間のように、

自分が足で踏みしめている「地」こそが
実のところ「天」かも知れませんし、

不運にも急降下していると思う状況であっても
広い視野で考えると「人間的に上昇」して
いるところなのかも知れません。

宇宙空間において「上」「下」はなく
「天」「地」の境界も厳密にはないのですから、

自身が信ずる方向に、確信を持って顔を向ければ
その方向にあるものが自身を引き寄せてくれている、
そのようなイメージで良いのではと思います。


…なかなか言葉では表現しにくいところですが、
そのような緩やかな心持ちで、エッシャーの
絵世界を知的に散策されてみるのも一興ですよ。

(作品は http://www.mcescher.com/ で閲覧できます。)


それでは、今回はこの辺で。。

いつもありがとうございます。


posted by laluz at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 「名言」の英語
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